A-bike:hirax.netさんの記事について
もうかなり前のことになるのだが、A-bikeと、その模造品について、hirax.netさんがこういう記事を書いている。
・純正A-bike より 8インチ空気タイヤ版 A-bicycle の方が断然イイ!の不思議
少なくとも、今回比べた純正A-bikeは「剛性」「直進性」において、パッチモンに比べてかなり劣っていた。前輪・後輪の直進性、そしてフレームから後輪への剛性感が、全然違うのである。
(中略)
意外なことに、8インチ空気タイヤ版 A-bicycle はさまざまな部分で改善がされていて、純正品より(現時点では)遥かに「良い移動道具」になっている。個体差は大きいだろうから、一概に判断することはできないが、今日の純正A-bike v.s. 8インチ空気タイヤ版 A-bicycle を実際に眺め、実際に触り、実際に乗ってみた上での勝負結果では、モノとしてはパッチモンの圧勝だった。
この記事が出た後、「お前さん、純正品を薦めていたじゃないか、立場ないね」的な意見がいくつか届いた。
ちなみに、hirax.netさんはこの後で以下のような記事も書いている。
・A-bike v.s. A-bicycle(8インチ空気タイヤ版)再び
(松浦注:きちんと純正品整備した。)すると、「純正A-bike」の剛性感が別モノと思えるほど、良くなっていた。フロントとリアを繋ぐ部分がフニャフニャなのは変わらないけれども、それ以外の剛性感がずいぶんと感覚が変わり、乗っている時の「不安感」が”かなり”改善されていた。自転車としては、まだ「(パッチモン)A- bicycle(8インチ空気タイヤ版)」の方が良かったが、、その安定感の違いは(ネジを締め直し、後輪のポジションを変える前の買ったそのまま状態よりは)かなり小さくなっていた。
(中略)
・・・結局、「純正A-bike」と「A-bicycle(8インチ空気タイヤ版)」の持ち主二人の意見は、”着実に改良をした”8インチ空気タイヤ版の「純正A-bike」が出たら、それが一番だよね、というところで一致した。
というわけで、問題は「かなりの部分が整備の問題であった」ということで解決しているのだが、以下少々補足を書いておくことにする。
私は、ここで比較対象になっている8インチ空気タイヤ版A-bicycleに実地で触れたことはない。もちろん乗ったことはない。それでも、ネットで調べると、何が起きているかは推測できる。
事態を理解する鍵は重量だ。
8インチのニセモノは非常に種類が多いので、hirax.netさんが入手した機種がどれなのかは分からないのだが、調べてみると公称重量5.7kgから8kgまでさまざまなようだ。
そこで推測なのだがhirax.netさんが入手した機種は、7.5kg〜8kgあるのではないだろうか。オリジナルのA-bikeは5.7kg。現行製品のA-bike Plusは6kg。重量差は、1.5〜2.3kg。
もともと6kgの製品に、プラス1.5〜2.3kgの重量増加を認めるならば、相当がっちりしたものにすることができる。「8インチのバチモンのほうが「剛性」「直進性」が良い」という印象は、かなりの部分、重量増加を認めた設計に依存しているのではないだろうか。
ここから先は、かなりの部分を購買者の価値基準次第ということになる。プラス1.5〜2.3kgの重量増加を認めて、価格も安い(1万円以下とのこと)、しかも走行性能も決して悪くないニセモノを選ぶか、それとも1.5〜2.3kgも軽いが5万円超の本物を選ぶか。
私ならば、たとえ5万円でも純正品を選ぶ。7.5kを持ち歩くのと5.7kgを持ち歩くのでは、体感的に大きな差があると考えているからだ。現行品でも6kgという重量は他の製品では得られない大きな利点だ。
自転車の軽量化は容易なことではない。よく「1gの軽量化に100円かかる」などといわれる。1kg軽くしたければ10万円というわけだ。実際、8kgを切った自転車を部品の交換で軽量化を目指すとそれぐらいはかかる。
しかも軽量化は耐久性とのトレードオフとなる。A-bikeは試作品が5.5kg、最初の製品版が5.7kg。次期製品が6.0kgと重くなってきた。5.5kgを目指したが、製品としては無理があって5.7kgになり、さらには売れるにつれて、最初の想定とは異なる使い方をされることも増えたため、6.0kgまでの重量増加を認めて構造を強化することになったのだろう。軽量化は本当に難しい。
A-bikeは軽さを活かして持ち歩くというコンセプトの製品だ。問題は、それだけの軽さと、軽さが代償として要求するコストが、自分の価値観に見合うかということだ。私は見合うと思っている。
もちろん「8kgであっても走行性能が良くてずっと安ければそれでいい」という考え方もありだ。プラス2kgもあれば、危険なほど壊れやすいということはないだろうし。
ところで、A-bikeにはもう設計的に詰めていく余地はないのだろうか?
例えば日本の自動車メーカーが、A-bikeのような自転車を、自動車に常備するオプションとして販売しないだろうか。日本の自動車メーカーの設計・製造能力をもってすれば、A-bikeを超えるA-bikeを作ることができるのではないかという気もするのだが。