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カテゴリー「趣味」の50件の記事

2016.01.13

東峰神社に行ってきた

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 久しぶりに刀を引き出すと、バッテリーがあがっていた。補水して充電。エンジンも無事掛かったので、思い立って東峰神社に行ってきた。
 東峰神社ですぐに分かる方は、飛行機マニアだろう。場所はここ。

 そう、成田国際空港のど真ん中である。

 こうなるにあたっては、あまりに皮肉な運命の経緯が存在する。

 まず、伊藤音次郎(1891〜1971)という名前を記憶に留めてほしい。日本民間航空の先覚者で、伊藤飛行機研究所を設立し、大洋から昭和初期にかけて数々の航空機を世に送り出した。
 が、やがて時代は戦争へと傾斜し、1945年の敗戦を迎える。やってきた進駐軍は、航空機研究の一切合切を禁止した。伊藤は54歳にして、全身全霊をかけてきた航空機への夢のすべてを失ったのである。
 戦後、かれは千葉県成田に開拓農家として入植した。その時、彼は伊藤飛行機研究所の敷地に建立した航空神社という神社の神様を、そのまま自分の開拓地へと遷座した。航空神社は東峰神社と名前をかえ、開拓地の神様となった。
 が、なんということか、1966年になって成田の地に国際空港を建設する話が動き出す。伊藤の開墾した土地はまさに予定地の真ん中にあった。彼は、精魂込めた開拓地を一番最初に売却する。前半生を航空機に賭けた彼には、それ以外の選択肢はなかったのだろう。
 しかし、成田の空港建設は、激烈な反対運動が起きて難航する。そして、かつては航空神社であった東峰神社は、反対派にとって空港反対運動の象徴となってしまったのだ。

 かくして成田国際空港B滑走路南端に、東峰神社は残ることとなった。神社へのアクセスは両側を高い塀で囲われた道を通らねばならない。さらには常時、警備が配置されており、訪れる者が職務質問を受けることもあるという。

 このことを知ってから、私にとって東峰神社は一度は行っておかねばならない場所となった。

 横浜新道から、首都高湾岸線、そして東関東自動車道と走れば、わりと短時間で、東峰神社へはアクセスできる。快調に刀の走りを楽しみつつ、午後2時前に到着。

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 塀、しかも上にはなにかの仕掛け(おそらくは対人センサー)を取り付けられた塀に覆われた神社のたたずまいに声を失う。

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 神社の鳥居内からアクセス道路方向をのぞむパノラマ画像。 たまたま来ていた地元の人によると、奥に駐車する軽自動車(人が乗ったまま降りてこなかった)が公安さんだそうで、ここに来る車両はすべてナンバーを記録されるとのこと。「公安といっても人次第で、穏やかに話しかけてくる人もいれば、むっつりと何を聞いても答えない人もいる」とのこと。

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 東峰神社の石碑(神社の名称は東峰だが、石碑は東峯となっている)の裏には、今も航空神社の文字が残る。建屋は伊藤音次郎が遷座した当時のままなのだろうか。小さな神社だ。

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 私は、いずれこの神社は空港施設内、もっとも人通りの多いところに移して、同時に伊藤など日本民間航空のパイオニア達を顕彰する施設を併設すべきと考えているが、実地に来て、これはこれでいいのかも、と思った。何しろ上をどんどん飛行機が通過する。伊藤の魂が地上にあるなら、案外このロケーションを喜ぶかも知れない。

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 なにより、成田国際空港を運営する成田国際空港株式会社が、この神社を大切にするかどうか、あまり確信が持てない。反対派も高齢化しているということなので、いつの日かこの場所は空港の敷地となるのだろう。が、その時に政府100%出資という“堅い”会社が、このような過去のいきさつを柔らかくそっと尊重してくれるかどうか、全く自信が持てない。
 ならば、ずっとこのまま、神社は頭上をかすめる飛行機を眺める場所であってよいのではないか……そうはいかないであろうことは承知しているが。

 機会があれば、この小さな神社に寄ってみてほしい。ここには、時代に翻弄された空へのあこがれと飛行機への夢が眠っている。

 神社に寄った後は、航空科学博物館へ。「博物館展示は、見る者が“もういいです、勘弁してください”と言うほど高密度である必要がある」と私は思っているが、その基準からすると悲しいぐらいに薄味の博物館。この敷地一杯の建物が欲しい、そこにがんがん飛行機を集めまくって、これでもかとばかりに展示しても……それでもスミソニアン航空宇宙博物館にはかなわないのだろう。そういう規模。

 もしも戦争がなくて、伊藤音次郎らの民間航空勃興の努力が実を結んでいたら、日本はもっと飛行機に寛容な社会になっていたのだろう。当たり前にあちこちに小さな飛行場があって、簡単に飛行機の免許が取得できる社会になっていたのだろう。そうなっていたら、この博物館ももっと大規模なものになっていたのかも知れない。

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 航空科学博物館から見る、夕日に反映して降りてくる飛行機は、素晴らしかった。
 帰りはちょっと寄り道をして首都高経由で東名高速を走る。海老名ジャンクションから圏央道へ抜けて、無事帰着。刀は高速道路が楽しいバイクである。

民間航空草創期の若き息吹と、皮肉なる運命:裳華房メールマガジン連載「松浦晋也の"読書ノート"
 以前書いた、伊藤音次郎を巡る小説「空気の階段を登れ」を紹介した文章。

2013.08.09

宣伝:8月11日(日曜日)、コミケット84(2日目)に参加します。西地区“か”ブロック-44b

 前回のC83に引き続き、コミケット84にサークル「L/D」として参加します。
場所は2日目日曜日の 西か-44bです。

 今回販売するのは以下の2冊。

 ・「Meet The Frog With The Ant」
 ・「2人の男の物語」
 共にオフセットA5版32p 予価500円
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 「Meet The Frog With The Ant」は前回コピー誌で出した小型折り畳み自転車「BD-Frog」「Bipod-Ant」の本を大幅に書き足してオフセット化したものです。目玉はFrogに対して行った改造の記録です。2007年以降の6年間で得た、小径折り畳み車をより使いやすくするための改造のノウハウを集大成しました。

 「2人の男の物語」は、前回の「遙かなりゴジラの遍歴」に続く、音楽評論本。目玉は伊福部昭と早坂文雄を、親友であった2人の作品を人生の交錯を絡めて論じた「ますらをぶりとたをやめぶり  2人の男の物語」です。
 2冊とも文章主体の本なので、以下に目次を掲載します。

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 両方買って頂いた方には、ちょっとしたおまけを用意するつもりでいます。

 また、今回はサークル「ロケットまつり」が落選したので、ロケットまつりの既刊本とペンシルロケットTシャツの委託販売もいたします。


 以上、よろしくお願いいたします。

2013.05.07

bipod-ant:Frogとは対照的な折り畳み自転車

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 昨年末のコミケット83では同人誌まで出しているので、なにを今更なのだが、実は2年程前にBD-Frogに加えて、もう一台の折り畳み自転車を入手した。
 2010年の末頃、ネットをさ迷っていて、一台の中古折り畳み自転車が売りに出ているのに気がついた。スマートコグというメーカーのbipod-antだ。この自転車が高性能だということは、以前サイクルフェスタで試乗して知っていた。
 そして、なによりもアコーディオンのように縮む独特の折り畳み機構はメカニカルな意味で大変魅力的だった。最初のロットが完売した後、再生産が行われず、新品は市場から姿を消していた。
 中古品は、値段もこなれており、大変リーズナブルだった。結論は書くまでもない。私は、誘惑に抗しきれず買ってしまった。

 antの設計は実に良く出来ている。至れり尽くせりで、どこにも不満を感じさせない。グリップをエルゴンに、サドルを手持ちの細身のものに変えただけだが、これで十分だ。
 BD-Frogは、設計のあちこちに詰めの甘い部分がある。それがフレームの素性の良さと相まって「これはもっと良い自転車になる」とばかりに改造の意欲をかき立てるのだが。antは、そんな気を起こさせない。製品として隅々まで完成しきっていて、乗り手に不満を感じさせないのだ。その意味では、日本のものつくりの最良の部分が結晶したような自転車と言える。ちなみにスマートコグは大阪の設計会社である(生産は台湾)。

Antfolding 独特の折り畳み機構は、全体でヒンジが14ヵ所もあるという特異なものだ。通常、折り畳み自転車は、いかに少ないヒンジで小さく折りたためるかが設計上の課題だ。DAHONはヒンジ1つの2つ折りだし、R&Mは前後サスペンションのピボットがそのまま折り畳みヒンジになる構造にして、折り畳み専用ヒンジをなくしている。
 antの場合、アコーディオンのように平たく折り畳みたいという要求が先にあり、そのためには14ヵ所ものヒンジが発生することを厭わなかったということのようだ。
 平たく畳めるので、畳んだ状態でのハンドリングは良好だ。そのままスーパーや喫茶店に持ち込んでも、文句は言われない。おそらくはベビーカーと同じように見えるのだろう。
Antfoldingpoint 標準で付いてくる折り畳み時の移動用コロも効果的だ。実はantを買うにあたって「折り畳み自転車は、軽量化を徹底して持ち上げて歩いたほうがいいのか。それとも軽量化はほどほどにしてコロを装着し、転がして歩いたほうがいいのか」を自分で試してみたいという意図も存在した。この件については、折り畳み自転車愛好家の中でも意見が分かれている。輪行バッグを肩に提げて移動したほうが機動性が高いことは間違いない。しかし一方で、コロで転がした方が楽だということも事実である。
 やってみた結果はといえば「一長一短」。当たり前といえば当たり前なのだが、どちらも向き不向きがあって絶対的に有利ということはない。また、持ち運びが楽かどうかは、折り畳みの手間や折り畳み形態にも左右され、製品全体で考えないといけない。その自転車が一貫した設計思想を持っているかどうかが使い勝手を左右する。
 antは見事なまでに一貫した設計思想を持つ折り畳み自転車だ。アコーディオンのように平べったく折り畳むということを至上命題にして、設計上発生する困難をすべて受け止め、解決して製品化している。その潔さにはほれぼれする。
 一方、問題点もいくつか存在する。まず12.5kgもある重量。コロで転がせるのであまり気にはならないが、それでも手に持つとずしっとくる。
 そして14インチのタイヤは、12インチと同様に選択肢がほとんどない。オリジナルでは台湾のDUROという会社が製造した14×1.5のスリックのタイヤを履いている。が、これが抵抗の大きそうなロードノイズを発生する。なにかもっといいタイヤはないかなと探しているが、今のところ見つからずにいる。
 同じスマートコグのbipod mintという車種は同じ14インチでも1.25インチの細身のタイヤを装着している。antも1.25インチにしたら若干走行抵抗は減るかな、と思うのだが、フレームに無理な負荷がかかりそうな気がするのでタイヤ交換には至っていない。

Antsocks1 antは、その特異な折り畳み形状のため、通常の輪行バッグが使えない。スマートコグは専用の「アントソックス」という輪行袋を販売していたが、ホームページによると品切れだ。入手不可能と思い、自分で縫製することを考えていたら、コミケで「普通に売ってますよ」と売っている自転車店を教えてもらい、入手することができた。
Antsocks2 このアントソックスがまた良く出来ている。antにぴったりの寸法で、しかも小さい。かぶせた状態でコロが出るので、押して歩くことができるし、畳めばステアリングヘッドに取り付け可能という至れり尽くせりっぷりだ。Frogの純正バッグが「Frogも入る普通のバッグ」であるのに比べると、アントソックスはantに最適設計されたant専用備品であって、トータルのシステムとしての使い勝手は雲泥の差がある。
Antsockssize ただし、12.5kgの重量は、色々軽量化を進めたFrogと比べると肩に食い込む。軽量化するにしても、全体がぎりぎりまで煮詰めた設計になっているので、そもそも交換可能な部位が少ない。さらには性能的にもデザイン的にも全体バランスが崩れそうで、部品を交換するのもためらわれる。
 また、アコーディオン方式の折り畳みで小さくなるとはいえ、もとから小さく設計されたFrogに比べるとやはりかさばる。
 ともあれ、輪行バッグが入手できたので、これからあちこちに行ってみようと思っている。

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 こんな良く出来たantだが、現在新品を入手することはできない。色々うわさはある。コストダウンのために製造工場を台湾から中国に移そうとしたら、中国の工場が必要な精度で部品を加工できなかっただとか、加工コスト高騰で、とてもじゃないがリーズナブルな価格では出せなくなっただとか。が、うわさでしかない。スマートコグが正式コメントを出していないので、真実は分からない。
 ただ、中国のBtoBサイトアリババで、折り畳み自転車を検索しても、antの模造品が出てこないというのは、一つのヒントになるかも知れない。ここを見ると、山のようにA-BikeやらSTRIDAの模造品は出ている。モバイキーにいたっては、電動化した模造品まで出ている始末だが、antの模造品はない。スマートコグの他の製品も模造品はないので、図面が流出していないからかも知れない。あるいは、現状の中国自転車産業では手を出せない高精度を必要とする設計なのかもしれない……このあたりの勘ぐりは、想像を楽しむだけに留めておくべきだろう。

2013.05.04

BD-Frog:タイヤをKidsPlusに交換した、山田耕筰の「赤とんぼ」

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 結局やってしまった。BD-Frogのタイヤを幅1.95インチのCityJetから1.75インチのKidPlusに変更した。共に独シュワルベ製。CityJetは廃番になったようで、シュワルベはこの他に、幅2インチのBigAppleを出している。
 以前、12インチタイヤの供給が心配だと書いたことがあるが、Frog購入以来5年間、きちんと高品位タイヤの供給は続いている。これは子供用のBMX(バイシクル・モトクロス)の車両が12インチタイヤを使っていて、世界的には結構な市場が存在するということが関係しているようだ。何にせよ、ありがたい話である。

Kidsplus1 CityJet(右)とKidsPlus(左)を比べると、これだけ違いがある。直径も若干小さくなっているのがはっきりと見て取れる。これだと走行感覚もかなり軽くなるだろうと期待しつつ作業を進める。

Derailer 今回は合わせて、ディレイラーの上のプーリーを12Tのものに交換した。リアハブに使っているシマノ・カプレオはトップギアが9Tという小径車用のハブ(通常はトップが11T)だが、時折ギア飛びするのが気になっていた。もっときちんとギアとチェーンを噛ませるには、と考えてディレイラーの上プーリーを大きくすることを思いついた次第。13T位入りそうだが、まずは12Tで様子を見ることにした。新しいプーリーは台湾のKCNC製。

 やや細いKidsPlusへの交換で、大分脚回りはすっきりした印象だ。ただしボリューム感はなくなり、ちょっと弱々しくも見える。このあたりは慣れだろう。
 走行は予想通りかなり軽くなった。一方で軽くなった弊害も出て来た。車輪の慣性モーメントが小さくなった結果、若干車体の安定性が低くなるのがはっきり実感できてしまったのだ。走行抵抗は小さいにこしたことはないし、車輪は軽いに越したことはない。軽量化・抵抗軽減と走行安定を両立させるには、若干車輪の外周に質量が集中しているようなタイヤがあればいいのだが。
 ちなみにタイヤ1本の重量は、CityJetが390g、KidsPlusが350g、BigAppleが325gとなっている。BigAppleだと、タイヤが太い分外周に質量が集中しているだろう。タイヤ単体も25g軽くなるというのは魅力的。ただしタイヤ圧はKidsPlusが最大で65psi(0.46MPa、4.4気圧)かけられるのに対して、BigAppleは最大55psi(0.38MPa、3.7気圧)である。走行抵抗軽減にはタイヤ圧を高くできるほうが有利だ。
 改めて2インチ幅のBigAppleに入れ替えるべきなのだろうか。自転車のタイヤは比較的安いので、こういう悩み方ができてしまうのである。
 12Tのプーリーを入れたことで、目論見通りギア飛びはかなり改善した。ただし完全になくなるには至らなかった。現在11Tが入っている下プーリーを10Tに落として、上を13Tにしてみるべきかも知れない。ただし、変速性能に影響が出てくる可能性もあるので、うまく行かなかった場合、部品をどう使い回すかを考えた上で、プーリーを購入する必要がある。

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 ところで、トップの写真の赤とんぼタイルはなにか、というと、茅ヶ崎にある山田耕筰「赤とんぼ」の歌碑なのである。山田耕筰は、大正15年(1926)に40歳で一家を挙げて茅ヶ崎に引っ越してきて、以後6年間を過ごした。「赤とんぼ」は昭和2年(1927年)の作である。
 湘南海岸は秋になると、相模川を飛び下ってくる赤とんぼが乱れ飛ぶ。山田耕筰にインスピレーションを与えたのは、あの赤とんぼの大群だったのかも知れない。ちなみに三木露風が歌詞となる詩を発表したのは、大正10年(1921年)のことである。
 が、こちらを見ると、作曲経緯についてかなり身も蓋もないことが書いてある。確かに、あれほどアクセントとメロディの一致にこだわった山田耕筰にして、「赤とんぼ」は妙ではある。
 作曲後しばらく忘れられていて、昭和30年(1955年)の映画「ここに泉あり」(同年2月公開)で、一気にヒットしたというのもびっくりだ。砂川基地闘争の強制執行のクライマックスで敵も味方も「赤とんぼ」を合唱したという有名なエピソードが翌昭和31年(1956年)の10月13日。ということは、砂川では「みんなが知っている懐かしい童謡を歌った」のではなく「当時の流行歌を歌った」と考えるべきなのだろう。
Akatonbo

2013.04.26

5年目のBD-Frog

 しばらく記事を書いていなかったBD-Frogだが、現在こんな状態になっている。
201304frog1

 見かけでは分からないが前後のハブはセラミックボール入りになった。

 小径車はハブの回転数が高い。このためスムーズに走るにはハブの抵抗軽減が重要になる。ところがシマノの小径車用のハブ「カプレオ」はコストダウンのためかハブ内面の加工が意外と荒い。
 一昨年11月、「ふじのくにCYCLE FES.2011 in 新東名」というイベントに参加して、開通前の新東名高速をFrogで89kmばかり走った。高速道路なもので、2%程度のだらだらの上り下りが連続する道だったのだが、そのだらだら下りで、どんどん普通の自転車に抜かれたのである。これは走行抵抗の低減を図らねばならぬと思ったが、実際の作業は今年までずれ込んでしまった。

Fujinokuni

 ちなみに12インチの小径車での参加は自分だけかと思っていたが、どうやら他に同じ12インチのOX Pecoで参加した方がいるようだ。

 セラミックボールは舟辺精工が通信販売しており、自分でも加工可能なのだが、Frogでは東京・曙橋の小径車専門店イークルにお願いした。というのも、最初は抵抗の少ないハブでゼロからホイールを組むつもりでイークルに相談していたのだが、現物を見せたところ、特殊な加工をしてあるので代替ハブが入らないことが判明。そのまま既存のハブにセラミックボールを入れることになった次第。

 研磨とセラミックボールの効果は予想以上に大きかった。ぐっとエネルギーロスが減ったのが体感できる。が、その代償として今度はタイヤがかなりの抵抗となっているのが実感できるようになってしまった。今入れているシュワルベのCityJetというタイヤは幅が1.95インチもあって太く、重い。実はより細くて軽いタイヤも手に入れてあるのだが、現在のCityJetが寿命になってから入れ替えるつもりだった。さあ、どうしたものか。



201304frog2 サスはサイクルショップしぶやのスプリングから、台湾製のオイルダンパー入のMulti-Sに交換した。現在は日本のショップでも買えるようだが、私は円高絶好調時にeBayで安く購入。
 これは効く。かなり効く。ペダリング時のエネルギーロスが目に見えて減り、走行時の姿勢も安定した。BD-1ないしFrogに乗る方にはお勧めだ。BD-1/Frogのサスはダンピングをバネの内側に押し込んだエラストマに持たせるという簡便な機構を採用しており、ダンピングが十分ではない。このため、以前からラジコン車用のダンパーや、バイク用のステアリングダンパーを使った改造が行われたりしていた。が、それらは結構高度な機械加工を伴い、だれでもできるというものではなかった。どこかがきちんと効くダンパーを組み込んだサスを出してくれないかなと思っていたら、元気な台湾自転車産業からこのような製品が発売されたというわけ。

 もともとFrogはタイヤサイズが小さい分、フロント回りの比剛性がBD-1より高い。このためフロントフォークの剛性が低いというBD-1の欠点はかなり緩和されているのだが、Multi-Sと組み合わせることでやっと理想的なセッティングが出たな、という印象である。ダンパーの容量が小さいので、耐久性はどの程度あるのか不明だが、壊れたらその時はそれまでと思って、がんがん使っていくつもりである。


201304frog4 リアもMulti-Sに交換したが、なかなか良い感じだ。このサイズの中にどうやってダンピング機構を組み込んでいるかは不明。ひょっとしたら各種エラストマを組み合わせているだけかとも思うのだが、ともあれなかなか効果的にダンピングを効かせてくれる。純正のハードエラストマよりもぼよんぼよんする感覚は小さい。また、サードパーティのスプリングとエラストマを組み合わせたリアサスよりも若干長めのストロークは確保できているようだ。



201304frog3 ヘッドパーツは、定番のクリスキング製に交換した。こちらも円高最盛期にeBayにて購入。すくなくとも自転車趣味にとっては円高は、けっこうな福音であったことは間違いない。BD-1/Frogは1-1/8のマウンテンバイク用ヘッドパーツを上下逆に使用する。以前のクリスキングのヘッドパーツは、逆に使用すると彫り込まれた「CRIS KING」の文字が上下逆さまになってしまったが、現在のモデルは上下を揃えて取り付けることが可能になっている。

 さすがは定番というべきか、ステアリング回りの剛性は体感できるほど向上し、なおかつ回転もスムーズになった。ステアリングダンパーが欲しいほどだ(それは本末転倒)。

 2007年12月に購入してから5年ちょい。ぼちぼちと改造は続いている。だいぶ理想の折り畳み自転車に近づいてきた感がある。
 が、分かる人には分かるでしょうが、ここからは金がかかるのだよなあ……(もちろんつまらない夢を追わなければいいのだ、が)。

Azumino
 改造ばかりしているのではなく、ちゃんと走ってますよ、ということで一枚。昨年の秋、安曇野を走った時の写真。

2011.06.30

ニコ動に新曲アップ

 少々前になるが、ニコニコ動画にオリジナル曲を1曲アップロードした。2年振りになる。

 こんな曲を書いていたのは29歳から31歳にかけてだから、過去の妄念を供養する行為とも言える。あと1曲残っているので、これもなるべく早くアップロードできるようにしたい。2年というのは間が空きすぎだ。

 ともあれ、面白い時代になったものだ。私が書いて本棚に放り込んでいた曲など存在しないも同然だった。演奏するにしても、演奏者を集めるような伝手も持っていない。「人がいない森の奥で木が倒れたとして、その時の音は存在したと言えるのか」という古い設問と同じだ。「存在しているとしても、存在していないも同然」ということである。
 それでも、ミクに歌わせてニコニコ動画にアップすれば、立派に社会的な存在になる。数は少なくとも聞く人がいて、わずかなりとも感想が帰ってくる。ニコ動に置いておくだけで、聞く人は増えていく。「いつか大ブレイクするかも」という虫の良い夢を見ることもできる。
  いつかどこかに届くことを期待して、瓶に詰めた手紙を流すようなものだ。流す場所が海や川ではなく、ネットというわけである。

 今回、DAWにLOGIC Expressを導入した。すると、これまでのGaragebandよりもぐっと音が良くなったのには驚いた。細かい調整も利くので、これまできちんとやっていなかったマスタリングのまねごとにも踏み込んでみた。声はメインボーカルがミクで、コーラスにルカを使っている。

 ニコ動の動画像をココログに貼れるようになったこともあるし、以下、過去に投稿した作品を貼って宣伝しておく。妙で不格好な曲ばかりだがご寛恕頂きたく思う。

 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。(宮沢賢治「注文の多い料理店」序)
 これは、音楽に魅せられたあげく、うっかり曲を書こうなどと思ってしまった人、すべての真情だろう。
 誰もが宮沢賢治になれるわけではないけれども。

2010.08.11

8月11日のはやぶさを巡るあれこれ

 本日の宇宙開発委員会本会議で、はやぶさ2の開発研究入りとイプシロンロケットの開発入りが正式に認められたとのこと。文部科学省は来年度予算要求に十数億円を計上する方針を固めた。

 この記事にあるように、開発研究というフェーズは搭載機器試作を行う段階。だからこのままでは2014年打ち上げには間に合わない。搭載機器では特に新規のインパクター開発が非常にクリティカルだ。間に合わすためには、年度内にもう一度開発フェーズ入りを審議する方向に持っていく必要がある。

 大塚実の取材日記に、今週月曜日のサンプル回収状況のブリーフィング内容が掲載されている。


 8月のうちに、サンプルが入っている可能性の高いコンテナB室の検査を行うことを検討しているとのこと。

 日本航空協会で、川口淳一郎プロマネが8月26日に講演を行う。


第251回 2010年8月26日(木) 18:00〜19:30
「日本の航空100年」記念講演 第3回
『はやぶさ』の帰還と,試料回収カプセルの産声,そして未来にむけて
JAXA宇宙科学研究所
教授
川口淳一郎氏

※都合により講師、テーマが変更になる場合もあります

会場 東京都港区新橋1-18-1
航空会館 7階 入場無料  地図yahooの地図
 (当日先着200名。事前予約等は行っておりません)
交通 JR新橋 日比谷口徒歩5分  都営三田線内幸町A2出口徒歩1分
お問合せ 〒105-0004 東京都港区新橋1-18-1 航空会館6階
(財)日本航空協会 文化情報室
電話 03-3502-1206  FAX 03-3503-1375

 惑星地質ニュースに、阿部新助さんと平田成さんによる、「はやぶさ帰還報告」が掲載されている。


 阿部さん(台湾 國立中央大學天文研究所)、平田さん(会津大学)は共にはやぶさサイエンスチームのメンバー。阿部さんはJAXA回収隊の光学観測班に参加した。


 アマゾンがアオシマ1/32のはやぶさのプラモデルの特別バージョンを販売する。本体が金色メッキされたもの。現在アマゾンでは予約を受け付けている。掲載されている写真によると、本体が金色メッキで、台座、スラスター、サンプラーホーン、ハイゲインアンテナ、太陽電池パドルが銀色メッキの仕様のようだ。アマゾン限定販売とのこと。2010年9月15日発売予定。

 色々書きたいのだけれど、まだ時間を取ることができないでいます。

2009.11.03

 BD-Frog:2010年から新デザインで復活

 今まで気が付かなかったのだが、独R&Mが、2010年モデルからBD-Frogを復活させていた。

Frog2010_2

 復活させたはいいのだが、この姿はいかに。フレームは同社の新型モノコックフレームに変更。これはいいとしてタイヤは12インチから16インチに。ギアは内装8段だが、重量は12kg。はっきり言って重い。値段は14万700円(税込)。

 ちなみにこっちは旧モデル。



Frog2006_2

 旧モデルのほうが良いデザインだったと思うのは、旧モデルオーナーのひいき目…だろうか。

 タイヤの大型化につれて、折り畳み時の寸法もずいぶんと大きくなってしまった。

  • 旧モデル w63×h48×d28(cm)
  • 新モデル w67×h57×d37(cm)
  • 寸法の差 w5×h9×d9(Δcm)

長さがプラス5cmというのは頑張ったと思うが、高さと厚みがプラス9cmというのはどうにも。特に厚みプラス9cmというは、持ち運び時に従来よりもかなりかさばるということを意味する。

 ちなみに現行のBD-1とブロンプトンは以下の通り。

  • BD-1(2010年9速モデル):w78×h61×d36(cm)
  • ブロンプトン(M3L):60×h58×d30(cm)

 12インチの旧モデルには、「スポークが折れやすい」という欠点があった。短すぎるスポークが乗車時のショックを吸収しきれなかったためである。この欠点を解消するには、タイヤを大きくすれば良い。オーナーとしては14インチが付けばずっと走行性能が上がるとは思っていたが、まさか16インチまで大きくしてくるとは。

 
 現状の私見は、デザインは「残念」、折り畳み性能は「問題ありか?」、走行性能は「不明」といったところだろう。もちろん、乗ってみたらぐいぐい前に出る気分の良い自転車に仕上がっている可能性もある。どこかで試乗できないだろうか。

A-bike:hirax.netさんの記事について

 もうかなり前のことになるのだが、A-bikeと、その模造品について、hirax.netさんがこういう記事を書いている。

純正A-bike より 8インチ空気タイヤ版 A-bicycle の方が断然イイ!の不思議

 少なくとも、今回比べた純正A-bikeは「剛性」「直進性」において、パッチモンに比べてかなり劣っていた。前輪・後輪の直進性、そしてフレームから後輪への剛性感が、全然違うのである。
(中略)
 意外なことに、8インチ空気タイヤ版 A-bicycle はさまざまな部分で改善がされていて、純正品より(現時点では)遥かに「良い移動道具」になっている。個体差は大きいだろうから、一概に判断することはできないが、今日の純正A-bike v.s. 8インチ空気タイヤ版 A-bicycle を実際に眺め、実際に触り、実際に乗ってみた上での勝負結果では、モノとしてはパッチモンの圧勝だった。

 この記事が出た後、「お前さん、純正品を薦めていたじゃないか、立場ないね」的な意見がいくつか届いた。

 ちなみに、hirax.netさんはこの後で以下のような記事も書いている。

A-bike v.s. A-bicycle(8インチ空気タイヤ版)再び

(松浦注:きちんと純正品整備した。)すると、「純正A-bike」の剛性感が別モノと思えるほど、良くなっていた。フロントとリアを繋ぐ部分がフニャフニャなのは変わらないけれども、それ以外の剛性感がずいぶんと感覚が変わり、乗っている時の「不安感」が”かなり”改善されていた。自転車としては、まだ「(パッチモン)A- bicycle(8インチ空気タイヤ版)」の方が良かったが、、その安定感の違いは(ネジを締め直し、後輪のポジションを変える前の買ったそのまま状態よりは)かなり小さくなっていた。
(中略)
・・・結局、「純正A-bike」と「A-bicycle(8インチ空気タイヤ版)」の持ち主二人の意見は、”着実に改良をした”8インチ空気タイヤ版の「純正A-bike」が出たら、それが一番だよね、というところで一致した。

 というわけで、問題は「かなりの部分が整備の問題であった」ということで解決しているのだが、以下少々補足を書いておくことにする。

 私は、ここで比較対象になっている8インチ空気タイヤ版A-bicycleに実地で触れたことはない。もちろん乗ったことはない。それでも、ネットで調べると、何が起きているかは推測できる。

 事態を理解する鍵は重量だ。

 8インチのニセモノは非常に種類が多いので、hirax.netさんが入手した機種がどれなのかは分からないのだが、調べてみると公称重量5.7kgから8kgまでさまざまなようだ。

 そこで推測なのだがhirax.netさんが入手した機種は、7.5kg〜8kgあるのではないだろうか。オリジナルのA-bikeは5.7kg。現行製品のA-bike Plusは6kg。重量差は、1.5〜2.3kg。

 もともと6kgの製品に、プラス1.5〜2.3kgの重量増加を認めるならば、相当がっちりしたものにすることができる。「8インチのバチモンのほうが「剛性」「直進性」が良い」という印象は、かなりの部分、重量増加を認めた設計に依存しているのではないだろうか。

 ここから先は、かなりの部分を購買者の価値基準次第ということになる。プラス1.5〜2.3kgの重量増加を認めて、価格も安い(1万円以下とのこと)、しかも走行性能も決して悪くないニセモノを選ぶか、それとも1.5〜2.3kgも軽いが5万円超の本物を選ぶか。

 私ならば、たとえ5万円でも純正品を選ぶ。7.5kを持ち歩くのと5.7kgを持ち歩くのでは、体感的に大きな差があると考えているからだ。現行品でも6kgという重量は他の製品では得られない大きな利点だ。

 自転車の軽量化は容易なことではない。よく「1gの軽量化に100円かかる」などといわれる。1kg軽くしたければ10万円というわけだ。実際、8kgを切った自転車を部品の交換で軽量化を目指すとそれぐらいはかかる。
 しかも軽量化は耐久性とのトレードオフとなる。A-bikeは試作品が5.5kg、最初の製品版が5.7kg。次期製品が6.0kgと重くなってきた。5.5kgを目指したが、製品としては無理があって5.7kgになり、さらには売れるにつれて、最初の想定とは異なる使い方をされることも増えたため、6.0kgまでの重量増加を認めて構造を強化することになったのだろう。軽量化は本当に難しい。

 A-bikeは軽さを活かして持ち歩くというコンセプトの製品だ。問題は、それだけの軽さと、軽さが代償として要求するコストが、自分の価値観に見合うかということだ。私は見合うと思っている。

 もちろん「8kgであっても走行性能が良くてずっと安ければそれでいい」という考え方もありだ。プラス2kgもあれば、危険なほど壊れやすいということはないだろうし。

 ところで、A-bikeにはもう設計的に詰めていく余地はないのだろうか?
 例えば日本の自動車メーカーが、A-bikeのような自転車を、自動車に常備するオプションとして販売しないだろうか。日本の自動車メーカーの設計・製造能力をもってすれば、A-bikeを超えるA-bikeを作ることができるのではないかという気もするのだが。

2009.10.26

A-bike:タイヤチューブを交換する

 事の発端は7月の半ば、A-bikeに乗ろうとしたら、前輪の空気が抜けていた。ポンプで空気を入れても抜けてしまう。どうやらバルブの根本に穴が空いたようだ。
 もともとA-bikeのタイヤには空気を入れるときに少しバルブを横方向にこじる必要がある。このためバルブ根本でチューブが裂ける事があり得る。このことはmixiのA-bikeコミュで知っていた。
 やってしまったか。チューブを交換しなくてはならない。

 早速、A-bike販売元の香港のサイトにチューブを注文した。この時、ふと考えた。6インチの小さなタイヤのチューブ交換は、かなり大変らしい。交換途中でチューブを傷つけたらそこでおしまいだ。
 もうひとつ、送ってくるチューブはまず間違いなく大陸中国製だろう。となると、どんな品質のものが届くかわからない。

 というわけで、予備のさらに予備も含めてチューブを4本注文した。ほどなくチューブは届いたのだが、そこからが大変だったのである。


Tire1_2 まず、送ってきたチューブが、4本ともあまり信用できそうになかった。タイヤに装着せず、そのまま膨らますと。ドーナツ状にきれいに膨らまず、太いところや細いところができるのだ。あきらかにゴムの厚みが均等になっていない。
 しかも、バルブ部分にはなにやらさびのようなものが浮いている。バルブ部分が錆びるような環境で保管されていたとすると、チューブのゴムはもっと痛んでいる可能性があるだろう。

 これはまずいのではないか…。不良品だったらかなわない。

 イヤな予感を感じつつも、他に手段がないこともあり交換してみた。




Tire2_2 Tire3 Tire3_1

Tire4 6インチのタイヤをリムから外すのは、かなり大変だが、慣れればできないことではない。タイヤレバーを3本使い、格闘すること約30分で、外すことができた。チューブを交換してはめるのも一苦労だが、なんとかなるものだ。この時、私はミシュランだったかが無料で配っているタイヤレバーを使ったのだが、後でパナレーサーが販売しているタイヤレバーを使うと、より簡単にタイヤを外し、取り付けることができた。道具は選ぶべきである。

 チューブを交換したタイヤのチューブに空気を入れてみる。きちんと入る。やれやれ、不良品かと思ったが使えそうだ。これで良し。

 しかし、良くはなかったのだった。

 4本買ったチューブ。まずは1本目。

 交換してから一週間ほどしたある日、A-bikeを置いた玄関から、突如「ぷしゅー」と空気が抜ける音が聞こえた。チューブを交換したばかりの前輪の空気が抜けている。

 またも格闘30分の末にタイヤを外して調べると、チューブに小さな穴が空いていた。どうやら、ごく狭い部分でゴムの厚みが非常に薄くなっており(製造時に気泡でも入ったのではないだろうか)、そこが破れたことが判明。やはり、取り寄せたチューブの品質には問題がありそうだ。とはいえ、まだチューブは3本残っている。交換だ。

 そして2本目のチューブ。

 今度は1ヶ月ほど持ったが、ある日、空気が抜けているのを発見。また破れたかと思ったが、空気圧が低くなっているだけで完全には抜けていない。ポンプで空気を入れてみると、バルブ部分がダメになっていて、内部圧力がある程度以上になると空気を逃げてしまうことが判明。

 またも、大汗かいてタイヤを外し、3本目のチューブに交換。

 交換後、空気を入れてみると、なんとバルブから空気が漏れてくる。どうやら、バルブに何かが噛み込んでいるようだ。
 何が噛み込んでいるかはわからないがはずれないかと、空気を入れ、バルブから放出しを繰り返してみた。すると、そのうちに、バルブから、なにかどろどろの白濁した液体が出てくるではないか。
 どうやら、内部に少量のゴム糊のような液体が注入してあり、小さなパンク穴をふさぐようになっているらしい。しかし、その液体が内側からバルブに入り込んで固まり、バルブが完全に閉じなくなっていた。2本目のチューブのバルブがダメになった理由も、これと同じらしい。
 内部から強く空気を噴き出させたら、ゴム糊状液体をすべて排出できるか、と思いきり空気を入れたら、バチン…チューブが破裂した。内部からはかなりの量のべとつく白濁液体が飛び散り、部屋の掃除が大変だ。

 なんだが非常に情けない気分になる。

 残るチューブはあとひとつ。ところがこれも液体がバルブに入り込んでダメになっていた。もうチューブ破裂の危険は犯せない。新たにどこかからチューブを調達しなくてはならない。

 幸いにして、楽天でディアマイフレンドというショップが独自に製造したチューブを販売しているのを発見した。「中国製」と書いてあるが、背に腹は替えられない。日本側から品質管理の指導が入っていることを期待しつつ注文した。今度は2本だ。もう4本まとめて注文するような、あぶないことはできない。

 このチューブだ。1本900円なり。

 送ってきたチューブはといえば、香港から購入したチューブと全く異なるものだった。まず材質が違う。通常の自転車屋で売っているパナレーサーのチューブと同じ材質だ。香港からのチューブは生ゴムのようなさわり心地だった。
 中に妙な液体が封入されているようでもない。
 そして、空気を入れてみるときちんと均等に膨らむ。これなら大丈夫そうだ。

 とにかくタイヤを外してチューブを交換した。これでどうやら落着である。

 ところが、このディアマイフレンド製のチューブには、より一層の利点が存在した。A-bikeの走りがスムーズになり、乗り心地が良くなったのだ。自転車の性能は、かなりの部分をタイヤに依存するとは聞いていたが、前輪のチューブを交換するだけで体感できる乗り心地が一気に好くなったのにはびっくりしてしまう。
 今、残る後輪のチューブも、もう一本購入した新しいチューブに交換してしまおうかと思案している。

 今回のことをTwitterに書いたところ、実際に中国ビジネスに携わっていたり中国製品で様々な体験をされた方々から反応が返ってきた。
 曰く、「中国は、品質にうるさい日本には一番よい品質のモノを出してくる傾向がある」「他のアジア地域で中国製品を買うと、かなり悲しい目にあうこともある」「日本メーカーが中国で生産する場合、相当な力を入れて品質管理手法の指導を行う」、さらには「一方で国内の品質管理が空洞化しつつある」「中国は国を挙げて品質管理を強化しつつある」とも。

 当面、中国製品は日本に入ってきたものを買うのが良いようだ。香港あたりから個人輸入すべきではないのだろう。しかし、いつまでもそうだと思ってはいけない。
 かつて、Made in Japanが粗悪品の象徴だった時代があったことを思い出そう。
 そのうち我々がMade in Chinaを高品質の象徴としてこぞって買い求める時代が来ないとも限らない。遣唐使の時代がそうだったように。

 このディアマイフレンドでは通販でA-bike Plusを購入できる。その他、ギアやタイヤなどの部品も購入可能だ。今後も乗り続けることを考えると、タイヤやチューブ、強化部品などは、購入して保存しておいたほうがいいかも知れない。

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