BD-Frog:肩にずしっと来るというのはどういう状態なのだろう?
気候がよくなってきたので、ほいほいと輪行に出かけるようになった。そこで気がついたこと。
BD-Frogは、タイヤをKidsPlusに交換したことで、80gほど軽くなった。この80gが、予想以上に効いている。具体的には、輪行バッグを肩からかけた時の圧迫感がはっきり分かるぐらい軽減した。これまでは随分と軽量化したが、まだ肩に響くなあという感じだったのが、普通の肩掛けカバンのようにすいっと持ち上げられるようになった。
たった80gなのに、これは一体どういうことか。サンプル数1で比較対照群なしの、あてにならない“実感”でしかないが、とりあえず考えてみる。
ひょっとして「重く感じる感覚」とか「肩にずしっと来る感覚」というのは、重量に対して線形なものではなく、どこかに境目があって、それよりも軽ければぐっと軽減されるものなのだろうか。もしもそうならば、その境目を超えるための軽量化には大きな意味があるし、境目を超えてからの軽量化は、コストパフォーマンスが悪くなる。
そもそも、「肩にずしっと来る感覚」はどのようにして起きるのだろうか。ZYGOTE BODYを操作して人体の内側を見てみよう。これは。なかなか秀逸な人体解剖模型で、体の中を自由に透過して観察することができる。
首から肩にかけては人体の中でもかなり構造が複雑な部分だ。肩に荷物をかけると、その力は主に背中から回り込んできている僧帽筋にかかる。筋肉は多層構造になっていて、僧帽筋の下の首側には肩甲挙筋という筋肉がある。自分の肩掛けをやりかたを考えるに、どうやら僧帽筋と肩甲挙筋とに力をかけているようだ。さらにその内側には、腕に行く鎖骨下動脈や、腕から戻ってくる鎖骨下静脈がある。ここには脊髄神経から分岐して腕に向かう神経も走っている。この部部に圧迫が加わるとどうなるだろう。
まず、動脈の圧迫は第一の原因には考えなくてもいいだろう。血圧が高いし、そもそも動脈が圧迫されたら腕のほうに異常がでるはずだ。同じく腕に影響が出るだろうということで静脈も原因から外す。よほど強い圧迫がなければ、この2つで深刻な影響は出ないのではないだろうか。
神経は圧迫されると、圧迫部分ではなく、その神経に関連する末端でしびれがでる。だから「肩にずしっとくる」という感覚には多分関係ない。すると、残るは僧帽筋と肩甲挙筋だ。
筋肉に圧力がかかると、収縮が起こり、堅くなって圧力を支えようとする。肩にベルトをかけると、かけた側の肩が上がる。筋肉が収縮している証拠だ。同時に首もかけた側の肩方向に曲がる。これは、僧帽筋と肩甲挙筋の両方が収縮していると考えて良いのではないか。
収縮すると、筋肉に酸素を供給する毛細血管が圧迫される。毛細血管内の血圧で対抗できないぐらいに圧力が上がると、血液が流れなくなっって、酸素不足による痛みが発生する——解剖図を見ての想像はこの程度だ。もちろん正しい保証はない。人体構造には素人である私の仮説でしかない。
肩にかかる圧力と血圧のバランスによる毛細血管の開・閉という機序が存在するなら、たしかに「ある程度以上軽くなると、すっと楽になる」ということがあってもよさそうだ。が、どこか一ヵ所の毛細血管が閉じたら、別の血管からの供給が増えるというようなこともあるかも知れない。
確かめる方法としては、肩に掛けるベルトの太さを変えるというのがいいだろう。ベルトが太くなると、単位面積あたりの力、つまり圧力は小さくなる。同じ重さでも、ベルトが太くなると楽になるとなれば、上の仮説への傍証となる(もちろんこれだけで正しいとは言えない)。
肩掛けベルトが太くなると楽になるのは日常的によく経験するが、定量的にはどんなことが言えるのだろう。太くなりすぎると肩へのフィットが悪くなることもありそうだ。また、ベルトの肩に当たる面に均等に圧力が分散するようにしなくては、ベルトを太くする意味はない。
自転車をいじくる身としては、定量的に「何kgまで軽くすればいいよ」という数字が出てくるとうれしい。が、人により千差万別の人体が関係してくる以上、そう簡単にはいかないだろう。
とりあえずは、ベルトを太くして試してみることにしよう。ベルトにかかる圧力は測定できるだろうか。また、外部から筋肉内部の血流量を測定することは可能なのだろうか。
きちんとしたカバンメーカーは、当然そういう実験を行っているのだろう。ネットのどこかにデータは落ちていないだろうか。