「コダワリ人」その後
拙著「コダワリ人のおもちゃ箱」に登場する人たちのその後をちょっとフォロー。
羅須地人鉄道協会は、糸魚川市が保管していたナローゲージの蒸気機関車「2号機」のレストアを実施。同期間車は9/9で閉幕した江戸東京博物館にての「大鉄道博覧会」にて展示された。
この機関車は日本で最後に製造された実用蒸気機関車なのだそうで、かつて糸魚川市の東洋活性白土という会社で使われていた。羅須は東洋活性白土の線路で活動していた時期があり、その縁でレストアの話が舞い込んできたそうだ。屋外保存だったために相当痛んでいたらしいが、見事に9日間でかつての外見を復元させることができたわけだ。
活動報告の「2号機と過ごした9日間」という一連の記事を読んでいくと、色々感じることが多い。「これが人の縁か」「本当に好きなんだなあ」…そして「糸魚川と2号機の思い出」などを読むと妙に泣けてくるじゃないか。
「大鉄道博覧会」終了後は、糸魚川市に戻りフォッサマグナミュージアムに展示されるとのこと。屋根付きの場所だろうか。また錆びて腐らせてしまうことはないだろうか。こうなると、糸魚川市にはちょっと度量を示して貰い、羅須の手で火を入れて運転するところまでレストアしてもらいたくなる。
おそらく羅須のメンバーも走らせたいのだろう。「大鉄道博覧会」終幕の中の「8日夕方にはロッドの保護のため、当会メンバーの手によりグリスの塗布が行われました。」という記述に、「きっと走らせてやるぞ」という意志を感じてしまうのは気のせいだろうか。
私の知る限り、日本の地方自治体は展示用の機械類を本当に大切にしない。以下は一つの事例。
第一次南極越冬隊の隊長を務めたことで知られる西堀栄三郎の故郷である滋賀県東近江市(旧湖東町)には「西堀栄三郎記念・探検の殿堂」という施設がある。
西堀の遺族は、ここに西堀が晩年愛用した木製ヨット「ヤルンカン号」を寄贈したが、町当局は屋外展示にしてしまい、結局経年劣化で崩壊が進み、2003年に撤去されてしまった。リンク先の滋賀報知新聞は、「老朽化のため」と書いているが、それがヨットだろうが、屋外に放置すれば痛むのは当たり前の話である。
私は2001年に、「探検の殿堂」を訪れているが、ヤルンカン号は、すでにかなり傷んでいた(写真は在りし日のヤルンカン号。2001年10月2日撮影)。
ここにはきちんとした展示用の建物もある。一応、「どきどき南極体験ゾーン」というのが目玉なのだが、要は人が入れる冷蔵庫でしかない。建屋の2階は「探検の殿堂」という、各国の探検家の資料展示エリアなのだが、おそらくきちんとした学芸員がいないのだろう。私が行った2001年の段階では、資料的な価値も低い、内容の薄い展示をしていた。
後の世に残すべき貴重な機械類こそ傷まないように屋内展示すべきなのに。
「探検の殿堂」には、初期の南極探検に使われた雪上車も屋外展示されていた。2001年の段階で、ろくに手入れもされずに腐食がいい加減進んでいる状態だった。
あれから6年経っているが、果たして今どうなっているだろうか。
取りあえず滋賀県東近江市(旧湖東町)というところを、私は「故郷の偉人の遺族から寄贈されたヨットを腐らせてダメにした地方自治体」として認識している。
糸魚川市が、せっかくレストア成った2号機を、きちんと屋内で保管しますように。そしていつの日か、羅須の手によって釜に火が入ることを祈ろう。
もうひとつの話題。
燃費を競うマイレッジマラソンの世界記録保持者の中根久典さんと中根さんのチーム「ファンシーキャロル」は、 8月18〜10日に開催された「スーパーマイレッジチャレンジ広島2007」で、エタノール燃料による世界記録に挑戦し、ガソリン発熱量換算3478km/lの世界新記録を樹立した。
写真を見ると、車両は従来と同じ「FC98」だ。単行本の取材時には次の車両で5000km/lを狙うと語っていた中根さんだが、まだ新車両の開発には踏み切れていないようだ(写真は中根さんより頂いたもの)。
それにしてもノウハウを持っているというのは強い。本にも書いたが、私は中根さんのノウハウが行動を走る自動車に還元されることを望んでいる。
ちなみに、本の中で触れたフォルクスワーゲンの「1リッターカー」はこれである。正直、私はこんなクルマが欲しい。
というわけで拙著の宣伝。この本はある種の人を思いきり刺激するみたいなのだけれど、そうでない人には徹底的に無視されているようだ。書いた本人は面白い本ができたと喜んでいるのだけれども、なかなかその面白さを他人に伝えるのは難しい。