12月17日、午後6時からの記者会見。もう資料が公開されているので、とりあえず記者会見の様子のみアップする。
出席者:中村正人プロジェクト・マネージャー、石井信昭プロジェクト・エンジニア、稲谷芳文教授
ISAS宇宙理学委員会委員長(中村)、宇宙工学委員会委員長(稲谷)の重鎮2人がそろった記者会見となった。
広報から:宇宙開発委員会調査部会の説明を行う。文部省記者会見は長時間の説明を行ったが、今回は質疑応答を中心にしたい。
中村:この前の記者会見以降のことを石井から、FTAについての説明を行う。
石井教授から、あかつき概要説明。今までに出てきた話が大部分なので割愛。
軌道変更エンジン(OME)噴射時の姿勢制御ロジックが公開された。噴射中はスラスターの噴射で姿勢を維持する。各軸周り各加速度が設定値以上に変化した場合は噴射を中断してリアクションホイールを使う姿勢維持モードに移行する。
1)OME噴射開始後から本来一定に保たれるべき燃料タンク圧力が緩やかに下降している、
2)噴射開始から152秒で、急激な姿勢変動が起き、同時刻に機体加速度も急激に変化した。
3)噴射開始から158秒で、噴射中断に対応する姿勢制御モード変更が記録されている。
4)158秒で、酸化剤タンク圧力がステップ状に上昇すると同時に、燃料タンク圧力が徐々に増加しはじめた。
稲谷:
これからの調査のやりかた。FTA(故障の木)解析について
事実の絞り込みにあたって、試験・実験が必要になるだろう。
故障の木解析の説明。
その中で、現状ではもっとも可能性があると思われる事象。
・姿勢異常を検知しての燃焼停止からの故障の木解析。資料中ハッチングしてあるのが現在可能性があると考えている事象。
現状で可能性があるのは
異常燃焼による軸非対称燃焼
その原因となるのは
・スロート後方後燃え:
・不安定燃焼
・インジェクタ噴射異常
これらについては
「実績のない燃焼条件で動作させた可能性があるので要因として否定できない」
さらに原因として考え得るのは。
・フィルム冷却のクーリングの噴射異常
・燃料の高圧ガス加圧系に入っている逆止弁CV-Fの閉塞
質疑応答
日経サイエンス:噴射停止は157秒ではなかったか。以前の発表では157秒だったような
稲谷:姿勢維持モードに入ったのが158秒。この操作にともなってエンジンを止める。
読売新聞:図面上で酸化剤側と燃料側でバルブの構造が異なるのはなぜか。エンジンは実際にはどういうところまで試験したのか。
石井:燃料側はガスと燃料が分離する隔膜が入っている。酸化剤側は隔膜がない。酸化剤側は気化した酸化剤が逆流する、可能性があるのでラッチングバルブがダブルで入っている。
稲谷:燃料と酸化剤の混合する割合。我々が事前の試験で混合比を降って試験の範囲をはずれた可能性がある。そこで何が起きるかは試験をしていないので分からない。
読売:セラミックスラスターの耐熱温度は1500℃というが、実際にはどの程度の温度条件まで試験で確認しているのか。
稲谷:ものが壊れるかの判断は応力なので、応力で考えている。温度では考えていない。燃えかたによって条件のきつい部位は変わっていく。今、シミュレーションで、想定外の状況で応力がどう変化するかを調べている。温度だけでは議論できない。
読売;試験で確認した範囲というのはどの程度なのかということを、後で出してもらえないだろうか、一般読者に説明する場合に、どこまで試験したかという目安がないと説明しにくい。
稲谷:たぶん、混合比をどの範囲で振って試験したかは出せると思う。
毎日:燃料タンクにチェックバルブは、絶対必要なのか。酸化剤リッチになった場合、温度が上がる可能性はあるのか。
石井;ない設計もありうるが、我々は必ず入れている。海外の設計は知らない。
稲谷:一般に最適混合比からはずして燃料リッチで燃焼させるほうが多い。少し最適より低い混合比で設計されているので、酸化剤リッチになると最適混合比に近づくので温度が上がっていく。設計点近傍では、酸化剤リッチで温度が上がっていく。
共同通信:燃焼室の温度の圧力は?
稲谷:今正確にでないので、後で出す。
不明:今、どこか欠けているということには分かっているのか。そのことで6年後の再突入は。
稲谷:燃焼室とノズルでは、燃焼室は壊れていない。加速度が出ているので、ノズルはどうなったかは今検討中。今、予断を持つべきではない。
中村:今の状態を確認するのが先決。決してあきらめるようは状況ではない。楽観しているわけもない。
読売:インジェクターの温度は前回、150℃ほどで予定の範囲内だったと前回聞いているが、インジェクターには影響の及ばない設計だったのか。
稲谷:インジェクター温度が正常であることは、燃焼室が健全であることの傍証となる。
ここから資料2
日経新聞;まずは、燃焼ガスが噴射方向に異常が出たというのは間違いないのか。
稲谷:その可能性を排除しないということ。たとえば、燃えずに噴射してノズルの外で燃える後燃えという現象もある。予想外の運転状況を今後試験で確かめていく。
日経新聞;タンク圧力異常と燃焼異常は関係しているということでいいのか。
稲谷;関係してくる可能性はあるだろう。
朝日新聞:不安定燃焼と、インジェクター噴射異常を細かく教えて欲しい。
稲谷:ある状態になると燃焼は安定せずにばたばたしたり息をついたりする。どうすればそういう状態になるかは、まだ分かっていない。インジェクター噴射異常は、吹き出し口の流量は上流の圧力と関係するかも知れない。燃料と酸化剤は混ざらないといけないが、圧力が予定と異なると、なにか部分的に詰まったり、よく混ざらなかったりする可能性がある。
稲谷:現象としては重なるかも知れないが、事象としては別。別に試験していきたい。
朝日新聞;フィルムクーリングの噴射異常とは?
稲谷:エンジンの冷やすために、燃料だけを内壁に沿って吹き出して、内壁全体を冷却している。この燃料を流すことをフィルムクーリングという。均一に流しているはずの燃料が均一でなくなったらどうなのか、とか、可能性を排除できないのでこの項目を残している。
朝日新聞:混合比を燃料リッチにしているというのはこのフィルムクーリングの分か。
稲谷:混合比は燃料と酸化剤の流量で定義している。フィルムクーリングの分も入っている。
朝日新聞:燃料側圧力低下から、燃料流量の低下を推測できていないのか。
稲谷:現在解析中である。
朝日新聞:燃料と酸化剤のパターンを試していたのを、地上の試験で超えた可能性があるというが、混合比は逸脱している可能性があるではなく、もう超えていると言っていいのか。
稲谷:可能性がある、だ。
朝日新聞:地上試験はもうやっているのか。
稲谷:現在計画中。ものをつくらねばならないので。すべてを年度内に行うのは難しいかもしれない。あかつき自身に噴射させる試験は、これで壊れたら後がないので慎重に行わねばならない。
ここでマイクが相模原に渡る。
青木:高圧タンクのフィルターに目詰まりが起きた場合はもっと早く圧力が戻る可能性があるということだったが、その後の検討は進んだか。FTAの×の項目は今後再浮上する可能性があるのか。
石井:記者会見で何言ったかあんまり覚えていないのですが。フィルターもバルブも詰まる可能性はある。まだ解析中です。
稲谷:×については、別の事実が出てくればそこで見直すことはあり得る。確かめてないことは、すべて確かめてから判断すべしだ。
青木:破損が起きていた場合、再投入は難しくなるのか。
稲谷:その可能性はある。
青木:現在あかつきの運用は何人体制で
中村:海外局は使わず、クルージングフェーズと同じ運用をしている。
マイク東京事務所に戻る。
共同通信:スロート後燃えと、フィルムクーリングの異常は何がおきるのか。逆止便の動作は地上で確認できるのか。5つの原因候補を絡めてシナリオは描けるのか、
稲谷:今、検討している。探査機の姿勢変動から、探査機に力がかかったことは間違いないので、その候補として考えている。こうなったらこうなるというシナリオがあるから候補として挙げているわけではない。バルブの動作は圧力で分かる。圧力変動を説明できるバルブの動作を解析しているところ。これからなお探査機に動作をさせて検証するということは、あり得るだろうが未定。
東京新聞:逆止弁は、特に新しい部品ではないということだが、具体的にどんなことが起きうるのか。
石井;得られたデータを説明できるよう調べている。非常にシンプルな構造。
不明:この5つの中で可能性の強弱はあるのか。逆止弁のトラブルとして水平展開はすでに行われているのか。
稲谷:これから強弱はつけていく。水平展開はまだ。
共同通信:フィルムクーリングで何度温度下げることができるのか。
稲谷:やらないと壊れるのでやっている。
共同通信:燃料タンクの圧力が下がった場合、フィルムクーリングに向かう燃料のはどうなるのか。
毎日新聞:逆止弁が過去に閉塞した事例はあるのか。閉塞がはずれて今は復旧している可能性はあるのだろうか、
石井;どちらについても、おそらくあると思うが、これから調べる。ないということはないと思う。
毎日新聞:スラスターノズル破損だけ、上流にさかのぼって検討しているということが、これが一番あり得るということなのか。
稲谷;今排除できない原因候補は平等に扱って検討していく。
松浦:今回の事故調査は人的組織的要因まで踏み込むのか。
稲谷;資料中にある「背景要因」はそこまで含む。
中村:すざくのXRS不具合調査も、人的要因まで含めて調査を行っている。今回もそこまでやる。
青木:現在、運用は平常に戻っているのか。
中村:そうだ。はいゲインアンテナを使った通信で、機器の健全性など確認している。
稲谷;最後に。ここまで説明のために色々たとえを使ったが、我々がそれを有力と考えているわけではない。あくまで予断を持たずに検討していく。
終了後のぶらさがりにて。
石井:噴射停止直前のデータを見ると、姿勢を元にもそうとする兆候がある。これはスラスターによる制御ができるということを意味する。(ノズル破損なりで)横方向の力がかかったとしても姿勢制御ができるということだ。6年後の投入の可能性はあると思っている。
以上